ボディビル部


金属の音がはねる。強く速く吸って吐く、何かのスポーツに固有とわかる、息遣いが聞こえる。川内ホールの3階をのぞくと、巧みに筋肉エピソードを織り交ぜて描かれた立て看板=写真=がまず目に入る。その先には、ぎっしりと詰められたトレーニングマシンを駆使する、たくましくしなやかな人たちの姿があった。優しい笑顔で記者を迎えてくれた室井郁哉さん(経・2)が、目の前で100キロのバーベルを持ち上げている=写真=。鮮烈極まる、謎多き学友会ボディビル部の秘密に迫る。

(聞き手:報道部・小平柊一朗)

ベンチプレスを行う室井さん。この日は60キロのバーベルから10キロずつ増やし、110キロまで挑戦した。

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―毎月、川内サークル部室棟の窓に筋肉にまつわる川柳=同部Twitter=が張り出されていますが

約6年前、「日本人のDNAに刻まれた五・七・五のリズムで作られる川柳の特徴を生かして、くすっと笑える言葉を目立つ場所に掲示することで、ボディビル部を認知してもらおうと思った」ため、始めたそうです。部員数は当時40人弱でしたが、現在ではその2倍以上に増えました。掲載する作品は、2年生の部員でアイデアを出し合って決めています。

―ずばりボディビル部は何をしているのでしょう

部員の一人一人が自分の好きなときに活動場所に来て、おのおのの目標に向けてトレーニングを積みます。いわゆる全体練習はありません。「筋トレを通して自分の人生を変えていく」という意味が込められた部のスローガン「人生を鍛える」のもと、互いに高め、助けあう雰囲気です。
大会への出場もあり、持ち上げたバーベルの重さを競う競技「パワーリフティング」では部員が全国大会で優勝しました。肉体美を競う「ボディビルディング」でも、全国大会で入賞の成績を残しています。

漫画「チェンソーマン」の登場人物であるマキマが描かれている
裏には、漫画「ドラゴンボール」の孫悟空

―室井さんも大会を目標に?

はい。先日は階級を下げて挑んだパワーリフティングの地方大会を通過できましたが、全国大会では規定の体重まであと約1キロ落とせなかったため出場自体がかなわず、大きな悔いが残っています。部の仲間が全国の舞台で活躍している姿を見て、自分もそこに立ちたい、挑戦したいという思いが強いです。

―入部当時からパワーリフティングに興味が?

最初はボディビルのほうをやりたかったです。大会のことがあって、今はパワーリフティングに気持ちが傾いています。

―入部の動機は何だったのでしょうか

かっこいい男になるためです。小学生のころから体型にコンプレックスがあり、受験も重なって体重が増えてしまったので、入学前からボディビル部に興味がありました。中学では卓球、高校では陸上部でやり投げをしていましたが、個人的には、東北大の学友会は高校までがっつり経験を積んできた人が、スポーツを続けるために所属するイメージだったんです。一方、ボディビル部に見学に行ったとき、初心者から始める人が多いと聞いて、ここしかないなと。筋トレを通して自分を変えようと決めました。

―「自らを鍛える場」としての、ボディビル部の強みは

もしジムでトレーニングするとしたら、基本的には自分1人で頑張ることになると思います。ですが、ここには応援してくれる仲間がいますし、一人一人がそれぞれのこだわりや強い意識をもってトレーニングに励んでいます。頑張る仲間を見て自分もさらに頑張ろうと思える、自分を高めるのに適した環境です。わからないことは仲間に相談できますし、筋トレの補助を気軽に頼むこともできます。

―室井さんは、週に何時間のトレーニングをするのですか

1回につき2~3時間のトレーニングを週4回程度行います。多いときは週6回やることもありますが、忙しいと週1回になってしまうこともあります。
食事は朝、昼、夜に加えてトレーニングの前後や最中にも取るので、一日に4、5回。自炊と外食はおよそ半々です。

トレーニングスペースに並ぶ器具①
トレーニングスペースに並ぶ器具②

―授業のある1日はどう過ごしていますか

所属する経済学部は午前中の講義が多くあります。3限まで講義を受け、直後か、またはしばらくしてからトレーニングをします。空きコマにトレーニングをすることも、アルバイトを入れることもあります。

―アルバイトは何を

飲食業と、東北大生協の川内メディアサロン実行委員会(メサロ)をかけ持ちしています。メサロで得た、大きなプロジェクトを動かす経験は本当に貴重です。労働時間は合わせて週に15時間程度で、どちらもシフトの自由がききます。

―大学の専門は

4月から、経済学部の経営学科に進みました。経営学における「人」の概念、例えば組織のリーダーにあるべき意識や思考のプロセス、リーダーシップの取り方、モチベーションの維持方法などに興味があります。

―大学生活を送るうえで大切な意識は

目標や、頑張ってみたいことを見つけるのがスタートになると思います。大学生活においてこそ、学問を頑張ったり、多種多様な団体に所属したり、アルバイトを経験したりと、幅広い物事を体験できるように感じます。頑張れないときは、過去に頑張れたときの環境や状況を再現して、意志を行動に移せるように努力しています。

<室井郁哉さんの1日のタイムスケジュール>
3限まで講義
PM2:30~ トレーニング
PM5:30~ アルバイト・自由時間
AM1:00  就寝

<ボディビル部 大会成績(敬称略)
〇第49回全日本学生パワーリフティング選手権大会
・団体の部 6位
・男子53キロ級 2位 頼晃季(理・1)
・男子59キロ級 6位 張田颯馬(工・4)
・男子66キロ級 1位 寺園大悟(工・3)/9位 佐口 隼人(理・3)
・男子74キロ級 9位 植木 祐樹(経・2)/10位 庄子 瑠(工・2)
・男子83キロ級 12位 有賀 駿太(理・2)
・男子93キロ級 10位 開本 圭介(工・1)

〇第56回全日本学生ボディビル選手権大会
・団体の部 6位
・ボディビルの部 17位 内藤優太(文・4)

部員の補助を受けながら、80ポンドのダンベルを両手で2つ持ち上げている

[2023年2月取材]※掲載学年などは取材当時の学年で表記

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